San Francisco Firebells 三塁手/外野手山本 彩夏
「海外で野球がしたい。」
憧れを、挑戦へ変えた瞬間
海外で野球をすることは、山本選手にとって以前からの夢でした。
そんな時、SNSで目にしたWPBLトライアウトの情報。
「現地で海外の選手たちと一緒に野球をしてみたい」という気持ちが、一気に現実の目標へと変わりました。
憧れだけで終わらせず、まず一歩を踏み出してみる。世界の選手たちと同じグラウンドに立ち、自分の野球がどこまで通用するのかを確かめたい。その純粋な好奇心が、山本選手を海の向こうへと動かしました。
パワーで敵わなくても、技術で勝負する。
自分の強みを信じた準備
海外選手の圧倒的なパワーを前に、同じ土俵で力だけを競うのではなく、自分が勝負できる場所を見極めました。「パワーでは勝てなくても、技術面なら勝負できると思いました。」
トライアウトに向けて重点的に磨いたのは、16年間の野球人生で積み重ねてきた技術。自分にないものを嘆くのではなく、自分にある強みを信じて伸ばす。それは世界へ挑むための準備であると同時に、自分自身の野球を見つめ直す時間でもありました。
一方で、不安だったのはコミュニケーションです。特に試合中の確認では、伝えたいことを思うように言葉にできず苦労しました。それでも、言葉の壁を理由に引き下がるのではなく、目の前のプレーに集中し、野球という共通言語で自分を表現しました。
挑戦するなら、今がいちばん早い。
忘れかけていた「野球を楽しむ心」
世界で見つめ直した原点
現地で最も驚いたのは、選手たちの野球の楽しみ方と、グラウンドを包む雰囲気でした。日本では味わったことのない、自由で前向きな空気。海外選手の力強いバッティングや肩の強さには、世界のレベルを肌で感じました。一方で、強さ以上に心に残ったのは、選手たちが心から野球を楽しんでいる姿でした。
「自分が忘れかけていた感覚でした。」勝つこと、結果を出すこと、期待に応えること。競技を続ける中で積み重なっていた多くのものを一度ほどき、「自分はなぜ野球をしているのか」という原点に立ち返りました。
好きだから続けてきた。楽しいからグラウンドに立ってきた。その当たり前で大切な気持ちを思い出せたことが、今回の挑戦で得た最も大きな成長でした。
慣れない環境でも、自分らしく。
海外で得た忘れられない経験
海外生活は、華やかな瞬間ばかりではありません。時差に身体がなかなか慣れず、ずっと眠気を感じながら過ごした日々。食事では、日本を離れて初めて「お米は必需品」と実感しました。
それでも、海外選手と実際の試合で戦えた時間は、本当に嬉しかった。オフの日には観光へ出かけ、グラウンドの外でも新しい文化や景色に触れました。
試合前に欠かさないのは、グローブを磨くこと。世界の舞台でも、いつも通り道具と向き合い、心を整えて試合へ入る。自分を「マイペースな選手」と表す山本選手は、環境が大きく変わっても、自分らしいリズムを失わずに挑戦を続けました。
女子野球を、もっと大きな舞台へ。
世界のパワーを前にしても、磨いてきた技術で勝負する。言葉に不安があっても、現地へ行く。慣れない環境の中でも、自分らしくグローブを磨き、グラウンドに立つ。その一つひとつの選択が、夢を現実へ近づけました。
そして海外で再会したのは、野球を始めた頃から心の中にあった「楽しい」という原点でした。
女子野球を、もっと多くの人に届くスポーツへ。山本選手は「女子野球を、MLBや日本のプロ野球と同じくらい影響力のあるスポーツにしていきたい。」と語ります。自分が世界へ挑戦した経験を伝え、次の選手の選択肢や勇気へつなげていくことも、山本選手が描く未来の一部です。
迷っているなら、
その気持ちを一歩に変えよう。
これから海外へ挑戦したい若い選手たちへ。若いと、もっと経験を積んでから挑戦しようと思ったり、勇気が出なかったりするかもしれません。でも、若いからこそ今挑戦する価値があります。その経験は、これからの野球人生に必ず生きると思います。迷っているなら、挑戦してみてください。
準備がすべて整う日を待つのではなく、今の自分で一歩を踏み出す。その一歩が、まだ知らない景色と、新しい自分に出会うきっかけになります。
山本彩夏選手の言葉から伝わってきたのは、挑戦とは「自分にない強さを証明すること」ではなく、「自分にある可能性を信じること」だというメッセージでした。山本選手が踏み出した一歩は、これから挑戦する選手たちの背中を押し、女子野球の未来を少しずつ広げていきます。